【書評】欧文書体のつくり方

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2020.05.08

欧文書体のつくり方

久しぶりの書評です。そもそも、本を読む時間をちゃんと取れていなかったので読書自体も久しぶりでしたが、読んで良かったと思える本ですので、ご紹介させていただきます。
2020/5/20発売になる本ですが、出版社であるBook&Designさんに確認し、許可を頂いて書評を書かせて頂いております。
ちなみに先行発売していますので、すぐ欲しい方はBook&Designさんへどうぞ。

この本は、書体デザイナーの小林章さんが書かれた本で、「欧文書体―その背景と使い方 (新デザインガイド)」「欧文書体 2 定番書体と演出法 (タイポグラフィの基本BOOK)」という、シリーズ化された本の第三弾という立ち位置の本です(出版社が1,2と異なるので、正式なシリーズではないかも)。

僕は上の2冊とも読んでいて、というかこの本達(小林章さん)に書体について教わったと言っても過言ではないくらいお世話になっておりまして、その続編という事で読まない訳はございません。今回も学ばせて頂きました。

今回は「欧文書体のつくり方」という事で、書体を作る視点からの解説がメインとなっています。しかし、だからと言って書体を作る予定のない人は読む必要がないか?というとそんな事はありません。自分も書体を作る予定は一切ございません(読んで作りたくなりました)が、大変勉強になりました。

文字の調整ポイントがわかる

普段デザイナーとしてフォントを選び使用していて、ふと「この調整は正しいんだろうか?」と思うことは多々あると思いますが、書体を作った方の視点を知る事で解決できる事は沢山あります。

幼稚な例で恐縮なのですが、例えば文字組をした時に「この文字だけ、頭が少し出っ張っているな」とか、気になり出してガイドに合わせて高さを調整したりした経験ってないですか?ガイドに合わせたはずなのに違和感が増した上に、「ガイドに揃っているからこれで正しいはずだ」なんて信じ込もうとしてしまったり。

僕は、こんな基本的な事も知らずに、自己流でここまでやってきた人間なのですが、この本を読めばそんな苦労はしなくても良かったなぁ。。と思います。もちろん考えた時間は全くの無駄ではないのですが、そのリソースを他の事に使ったらもっと効率が良かった事は言うまでもなく(遠い目)。

ま まぁ、僕の話はいいとして、誰しも苦労する字詰めのポイント等、役に立つ情報が図入りで、分かりやすく書いている事もとても助かります。

デザイン全体のクオリティーアップに

フォントを好き嫌いだけでなく、「なぜこのフォントが良いのか」という文字の見かたのポイントを多く知る事は、デザイナーとしての幅に繋がり、デザインそのものに大きく関わってくる部分だと思います。
また、クライアントさんに「何故このフォントを選んだか」というのが説明出来るかどうかも、すごく成果に繋がる部分ですよね。

そして、文字を作る上で必要な錯視の調整方法だったり、細かい曲線の調整は、デザインのレイアウト・細かい調整方法に応用できる部分です。それで思い出したのですが、Appleの作る角丸なんかも、書体作りのような細かい部分の調整ですね。

そして何よりも、文字を作る大変さがわかる事で、文字を大切に扱うことにも繋がりますので、デザイン全体のクオリティーアップにも繋がると思います。

さてさて、ざっくりとしたご紹介になりましたが、このへんで終わりにしたいと思います。
前述の通り僕はこの本の著者である小林章さんの本を通じ、フォントの扱いを覚えてきましたので、小林章さんは僕にとって先生のような存在です(お会いした事はないですが)。
素晴らしい書体を作る傍ら、このような本を出してくださる事に感謝しつつ、もっとたくさんの方に読んで頂けるように紹介させて頂きました。

フォントを作りたい方は勿論ですが、フォントを上手に扱いたい方、単純にフォントが大好き!という方にもおすすめです。

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