【書評】欧文書体のつくり方

2020.05.08

欧文書体のつくり方

久しぶりの書評です。そもそも、本を読む時間をちゃんと取れていなかったので読書自体も久しぶりでしたが、読んで良かったと思える本ですので、ご紹介させていただきます。
2020/5/20発売になる本ですが、出版社であるBook&Designさんに確認し、許可を頂いて書評を書かせて頂いております。
ちなみに先行発売していますので、すぐ欲しい方はBook&Designさんへどうぞ。

この本は、書体デザイナーの小林章さんが書かれた本で、「欧文書体―その背景と使い方 (新デザインガイド)」「欧文書体 2 定番書体と演出法 (タイポグラフィの基本BOOK)」という、シリーズ化された本の第三弾という立ち位置の本です(出版社が1,2と異なるので、正式なシリーズではないかも)。

僕は上の2冊とも読んでいて、というかこの本達(小林章さん)に書体について教わったと言っても過言ではないくらいお世話になっておりまして、その続編という事で読まない訳はございません。今回も学ばせて頂きました。

今回は「欧文書体のつくり方」という事で、書体を作る視点からの解説がメインとなっています。しかし、だからと言って書体を作る予定のない人は読む必要がないか?というとそんな事はありません。自分も書体を作る予定は一切ございません(読んで作りたくなりました)が、大変勉強になりました。

文字の調整ポイントがわかる

普段デザイナーとしてフォントを選び使用していて、ふと「この調整は正しいんだろうか?」と思うことは多々あると思いますが、書体を作った方の視点を知る事で解決できる事は沢山あります。

幼稚な例で恐縮なのですが、例えば文字組をした時に「この文字だけ、頭が少し出っ張っているな」とか、気になり出してガイドに合わせて高さを調整したりした経験ってないですか?ガイドに合わせたはずなのに違和感が増した上に、「ガイドに揃っているからこれで正しいはずだ」なんて信じ込もうとしてしまったり。

僕は、こんな基本的な事も知らずに、自己流でここまでやってきた人間なのですが、この本を読めばそんな苦労はしなくても良かったなぁ。。と思います。もちろん考えた時間は全くの無駄ではないのですが、そのリソースを他の事に使ったらもっと効率が良かった事は言うまでもなく(遠い目)。

ま まぁ、僕の話はいいとして、誰しも苦労する字詰めのポイント等、役に立つ情報が図入りで、分かりやすく書いている事もとても助かります。

デザイン全体のクオリティーアップに

フォントを好き嫌いだけでなく、「なぜこのフォントが良いのか」という文字の見かたのポイントを多く知る事は、デザイナーとしての幅に繋がり、デザインそのものに大きく関わってくる部分だと思います。
また、クライアントさんに「何故このフォントを選んだか」というのが説明出来るかどうかも、すごく成果に繋がる部分ですよね。

そして、文字を作る上で必要な錯視の調整方法だったり、細かい曲線の調整は、デザインのレイアウト・細かい調整方法に応用できる部分です。それで思い出したのですが、Appleの作る角丸なんかも、書体作りのような細かい部分の調整ですね。

そして何よりも、文字を作る大変さがわかる事で、文字を大切に扱うことにも繋がりますので、デザイン全体のクオリティーアップにも繋がると思います。

さてさて、ざっくりとしたご紹介になりましたが、このへんで終わりにしたいと思います。
前述の通り僕はこの本の著者である小林章さんの本を通じ、フォントの扱いを覚えてきましたので、小林章さんは僕にとって先生のような存在です(お会いした事はないですが)。
素晴らしい書体を作る傍ら、このような本を出してくださる事に感謝しつつ、もっとたくさんの方に読んで頂けるように紹介させて頂きました。

フォントを作りたい方は勿論ですが、フォントを上手に扱いたい方、単純にフォントが大好き!という方にもおすすめです。

【書評】ボドニ物語

2018.06.16

ボドニ物語 ボドニとモダン・ローマン体を巡って

ボドニという書体は、ファッション系のデザインには引っ張りだこで、本屋さんの雑誌売り場を眺めていると、派生フォントを含め、必ず目に入ってくるような人気のある書体です。
細かいフォントの紹介は省略しますが、今回紹介するのはそんな大人気のフォント“Bodoni”にまつわる物語です。

内容は、作者の生い立ち〜時代背景、字体に関する考察、派生フォントにまで及び、ボドニファンにはたまらない内容になっていると思います。

ジアムバティスタ・ボドニにまつわるお話

自分が一番興味を持った部分は、この美しいフォントを作った“ジアムバティスタ・ボドニ(本の綴り通り)”の生い立ちから、時代背景のお話です。

18世紀の書体デザインは、現在とは技術的な側面で大きく異なります。
今のようにコンピューターなんてない時代ですから、フォントをデザインした後に彫刻し、鋳造までを行う事が必要でした。
その為、技術の発展が表現可能なデザインを決定づける大きな要因の一つでした。

そんな時代背景の中、ボドニという人物が書体全体に与えた功績の大きさを知る事が出来る内容になっています。また、同時代に活躍したディドー、グランジャン、フールニエ、キャスロン、バスカービルなんかとの絡みも少し出てきたりするところも面白かったです。

ボドニという書体のその後から現在

ボドニという書体は、人気の高さ故に生み出された後にも様々なコピーが作られて行きます。また、精度の高い活字を量産する技術がなかったことも多いに影響しますが、ボドニという名前がつけられていても、オリジナルとはかけ離れたものも少なくないようです。

その派生フォントの種類の多さから、ボドニを購入する際に迷った経験があります。
しかし、この本を読んで、完全なオリジナルにこだわる意味はあまりなく、時代や好みにあった、きちんとリメイクされた書体を選ぶ事が大事なんだと改めて思いましたし、生い立ちを知った後にはより良いボドニが選べるのではないかと思いました。また、ボドニをより一層愛おしくを扱うようになった事は言うまでもありません。

とてもマニアックな本ですが、ボドニが好きな方は面白く読む事ができると思いますので、ぜひ読んで見てください。
本書は絶版になっており、中古でしか購入できませんが、お店によってはとても安く買えます。

この本について

題名
ボドニ物語―ボドニとモダン・ローマン体をめぐって
著者
田中 正明
発行者
山本 隆太郎
発行所
(株)印刷学会出版部
発行日
1998.4.8

【書評】Detail in typography

2017.06.10

Detail in typography

久しぶりの書評です。とても良い本に出会ったので。

はじめに断っておきますが、題名や画像には商品の購入ページへのアフィリエイトリンクを貼ってあります。
勿論、そちらから購入していただく事も可能ですが、目的はどちらかというと著作権上の問題をクリアする為です。(正当な販売の目的以外で、表紙等の写真を使うと、著作権違反になる可能性があるらしく)
とはいえ、リンクから買っていただくと、お役に立てた感じがして、少し嬉しかったりもします。

Detail in typography

さて、本題に入ります。

この本は“読みやすい欧文組版”のために書かれている本で、全世界で10カ国以上で翻訳されている、世界的に評価されている本です。

「これは読むしかない」と、発売前に予約し購入しました。
届くと同時に一気に読み進め、その日のうちに読み終わりました。内容の充実ぶりが読み進められた一因ですが、なによりこの本はページ数が70ページ弱しかありません。
というと「そんな少ないページ数でタイポグラフィの本が書けるの?」と思うかもしれません。でも大丈夫です。とっても内容が濃いです。

副題にあるように「読みやすい欧文組版のため」と、目的がはっきりしている事も、分かりやすい内容にまとまっている理由の一つだと思います。

杓子定規にならぬように

筆者のはじめの挨拶で「絶対的な教科書だとは思わないでほしい」と言っています。また、「この本が伝えていることを元にしながら疑問を臨機応変に解決できる、賢いデザイナーを読者として想定している」とあらかじめ断ってから書かれている内容はとてつもなく的確で分かりやすくまとまっています。

「僕が教えた後のことは、君たちで考えてください」という割り切ったスタイルが成功している好例といってもいいかと思いました。

内容は、欧文について書かれていますが、日本語書体にも応用できる組版における注意点や、見るべきポイントが、簡潔に「えっ!こんなペースで!」と次から次へ記述されていて、目から鱗でした。

この一冊のみでタイポグラフィの概要がわかる。という意味で大変優れた本だと思います。

ただ、勿論これ一冊を読んだからタイポグラフィが完璧に出来るようになる教科書。という訳ではありません。というか、そういう発想自体が問題であり、常に状況に合わせて臨機応変に考え、杓子定規にならぬようにしましょう。という事が、実は一番のメッセージだったと思いました。

このサイズの本にこれだけの内容が詰められる。という意味においても必読の一冊だと思います。
超オススメです。

この本について

題名
ディテール・イン・タイポグラフィ 読みやすい欧文組版のための基礎知識と考え方

著者
ヨースト・ホフリ
山崎秀貴
監訳
麥倉 聖子
発行所
Book & Design
発行日
2017.5.25

“もじ部”という本の紹介

2016.12.05

もじ部

書体を知る事は、デザイナーにとって非常に大事です。
というか、書体を知らないとデザイナーとして仕事を行うのは困難であり、書体の引き出しが多ければ多い程デザインの引き出しが多い。とも言えると思います。

そして、書体を知るには「書体デザイナーに聞くのが一番」という事で、オススメの本を紹介いたします。

部長と部員

全体の構成ですが、タイトルの「もじ部」が示すように、“書体デザイナーが部長”で、“参加者(デザイナーや学生)が部員”と、部活動のような設定で、対話方式によって進められていきます。※実際の内容は先生と生徒みたいな感じです。

部長として登場するのは、名前は知らなくてもデザイナーなら一度は使ったことがある、あのフォントやこのフォントを作った、錚々たるメンバーが登場し、フォントを作った時の話などが語られており、読み応え十分です。

今まで何気なく使用していたフォントが「この人が作ったのかー」とか「こんな背景があったのか」と知識が増え、フォントを使う時のワクワク感が増したり、フォントを見る際により深い部分で理解出来るようになるきっかけになる事でしょう。

圧巻の巻末綴じ込み

本編の後に巻末綴じ込みとして「もじモジ座談会 フォントデザインについてあれこれ語りました!」という“おまけ”というには豪華な内容の綴じ込みが付いています。
個人的にはこの綴じ込みを強くオススメしたいです。

内容は、小宮山博史さん、藤田重信さん、鳥海修さん、小林章さん、祖父江慎さん。と、これまた豪華メンバーが集まって、書体について話し合っています。
その内容がとても面白く、書体についての知識を得ると同時に、書体を見る面白さも知ることが出来ます。

また、綴じ込みの作りが面白くて、タイトルや本文に使用される書体が、場所によって変えてあって、書体によって雰囲気が変わるのが感じられ、とても面白かったです。

総評

「書体が無かったら、我々デザイナーの仕事がどれだけ困難になる事でしょう」と言う所まで考え出すとキリがないのですが、デザイン制作という作業において、書体がデザインに影響する割合を思うと、書体デザイナーの方々には頭が上がりません。

そして、その方々がこだわり抜いて作った書体を使わせて頂いている我々も、良い仕事をしていかないといけない。と背筋が伸びる思いがしました。

フォントを使用する際に疑問を感じている方にはもちろん、書体の知識を広げたい。という方にもオススメです。
書体選びに一段階の深みが加わる事間違いなしです。

この本について

題名
もじ部 書体デザイナーに聞くデザインの背景・フォント選びと使い方のコツ
編著者
雪朱里+グラフィック社編集部
発行所
グラフィック社
発行日
2015.12.25

「図説 サインとシンボル」との出会い

2015.08.16

デザイナーを生業としていく上で、いつも頭の片隅に「究極のグラフィックとは?」という疑問がありました。
一つの点、そして一本の線。“伝える”という点における最もパワフルな形って?

現在、流行っているフラットデザインやシンプルなデザインをはじめから目指すのではなく、削ぎ落として行った結果浮かび上がってくる一つのシンプルでパワフルなグラフィック。それを追い求めて、いずれ突き詰めた答えが見つかる事を目標にデザインをやって来ました。

そして、あらゆる文化や言語を超越して尚伝わるグラフィックはあるのだろうか?と、考えていた時、たった三本の線で表現できる「矢印」が思い浮かびました。道標や案内には文化を問わず使えるのではないか?と。
しかし、考えて行くと、矢印の起源は武器としての矢の誕生前には通用しないだろうという結論に至りました。

グラフィックの考察。矢印、星、月

次に考えたのは「三日月」や「星」。
「うーん。これは割と核心に近いぞ」なんて、深いんだか深くないんだかわからない事を延々と考えていた矢先、この本に出会いました。題名はずばり「図説 サインとシンボル」です。

良書との出会い

著者は書体「Univers」「Frutiger」「Avenir」等々、有名な書体を数多く作っているアドリアン・フルティガー氏。
「これは読むしかない」と、迷わずレジに持って行きました。

この本は、点や線、記号、サイン、文字、シンボル等に関して、フルティガー氏のイラストを交えて、解説してある。という内容になっています。
日本の家紋に関しても少し書いてあったりします。

まさしく自分が求めていた内容でした。
結論から言いますと、この本はありとあらゆるデザイナーが読むべき。と思える程の内容でした。

文化と密接に関わるグラフィック

自分が考えていた「究極のグラフィック」は、表意文字としての起源でもある、象形文字に近いものでしたが、やはりそれらは文化の発展や、生活環境に左右されながら発展してきたものであり、文化を超えた存在、例えば宇宙人にも伝わるデザイン。と言えるものは、ないのかもしれません。

矢印は、戦う事や、動物を狩る事のない草食の文化しかなかったら通じないでしょう。
星は、その生き物の住んでいる星では瞬いていないかもしれません。月も同様です。

従って、我々デザイナーが心がける事として、文化や環境を知った上での共通言語を探る。という事になるのでしょう。

シンプルでシンボリックなものというのは、当たり前のように「わかっている気」がしますが、掘り下げていくと、ちゃんとわかっていなかったりしませんか?
誰かに説明しようとして言語化しようとした時に、「あれ?」って思ったり。

思えば僕は、先人たちの文化の上に成り立ったシンボルを、あまり考えずに使って来た。という事に本書を読んで気付かされました。

デザインの判別しやすさ

同じ6を表すが、読みやすさが違う

上の図は、左右共に升目に点が六個入っています。
左側はお馴染みのサイコロの6。
右側はランダムに6個の点が並べられています。

一目瞭然ですが、左側は一瞬で「6」と判断できます。
サイコロで馴染みがあるからです。

一方、右側は点を一つずつ数えなければ数を判別できません。これが標識だったら。と思うと事故が多発する事が容易に予想できます。

これが正にデザインの本質的な部分ではないでしょうか。
つまり、文化を無視しては、目的に近づけない。という事です。
勿論サイコロの目を超える形態を探すのも、今を生きるデザイナーとしての役目ですので、忘れずにいたい所です。

最後に

究極のデザイン。という身に余るテーマを考え続けていましたが、その結果としてこの本に出会えた事を心から良かったと思いました。

デザイナーとしての仕事は、先人達の経験や試行錯誤、そして文化の上に成り立っている訳です。そして、今、正にデザイナーとして仕事をさせて頂いている自分は、その文化をアップデートしていかなくてはならない。と強く感じました。

この本について

題名
図説 サインとシンボル

著者
アドリアン・フルティガー
越朋彦
監訳
小泉均
発行所
研究社
発行日
2015.6.24

【書評】クリエイターのための法律相談所

2015.04.08

クリエイターのための法律相談所

WEBやグラフィック等、デザイナーとして活動していく上で関わってくる法律といえば著作権、肖像権、意匠権等が挙げられます。

普段仕事をしていて、デザインに使用したいアイコンを、素材サイトからダウンロードする時や、無料の素材等を使用する際に「あれ?これってどこまで使っていいの?」と、ふと疑問に思ったり。
はたまた自分の制作物を納品した後にクライアント様から「制作ファイルも納品して下さい」と言われた時に「あれ?そんな契約だったっけ?」なんて思うことって多いですよね。

実際にそんな風になってから調べてもいいのですが、出来れば仕事を始める前に確認を取る意識を持っていると、不要なトラブルも避けられます。
今回紹介するのは、そんなクリエイターの為の法律に関わる本です。

こんな有難い本を書いてくれた著者ですが、松島恵美さん・諏訪公一さんです。
お二人とも弁護士の方ですが、デザイン関連を扱うことが多いのか、本当にデザイナーが良くぶち当たる問題を分かりやすく書いて下さっています。

デザイナーの責任として

デザイナーなら、著作権や肖像権を意識していると思いますが、割とぼんやりとした知識のままだったりしませんか?
僕はそうでした。。この本を見てとても反省させられました。

肖像権を侵害している画像をアップしてしまったり、使用許諾範囲を十分に確認せずに納品してしまったりした際に、万が一訴えられたりした場合、クライアント様のイメージを損なってしまったり、多大な迷惑がかかってしまいます。

そうなってしまった場合、当然その損害の責任をクリエイターが取らなくてはなりません。
自分を守るというのもそうですが、まずはデザイナーとして責任を持って知っておくべき知識だと思いました。

自分の権利を知る

また、自分の制作物にどんな権利があるのか?というのもとても大事だと思いました。

  • 制作ファイルを納品したら、クライアントが勝手にデザインを変更していた。
  • ポスターのデザインを納品したら、リサイズされてフライヤーとして使われていた。
  • コンペに参加したら、全て不採用にされたのに、提出案にそっくりなデザインが制作されていた。

等々、デザイナーをしていると、こういう「あれ?」という事が起きたりしています。

法律や権利があるからと言って、全ての事例に行使出来る訳ではありませんが“まずは知っておく”という事がとても大事です。

事後だと中々喧嘩になりそうで言えない事も、案件を着手する前段階で確認出来ていれば防げる事案も非常に多いと思います。
そのさじ加減は人それぞれだとは思いますが、知らなければ何もできませんしね。

僕はこの本を読むまで、自分のデザインにある権利や、クリエイターを守る為の決まりがこんなにあるという事を、知りませんでした。というか曖昧に考えていました。

「クリエイターのための法律相談所」は、一冊全てを読んでも為になるし、「あれ?」と思った時に辞書のように調べる事も出来ます。
クリエイターの方は一冊持っていると良いと思い、紹介させて頂きました。

この本について

題名
クリエイターのための法律相談所
著者
松島恵美、諏訪公一
発行者
久世利郎
発行所
グラフィック社
発行日
2012.3.25

フォントのふしぎ-小林章-

2014.06.07

フォントのふしぎ

書体デザイナーの小林章さんの著書です。
小林章さんの著書は、何冊か読んでいるのですが(まだ紹介出来ていませんが。。。)、どの本も勉強になるだけでなく、書体に対する愛情を感じられ、読んでいて非常に気持ちが良いのです。本書ももちろん充実した内容でした。

副題の「ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?」という言葉も、デザイナーだけでなく、経営者の方にとっても実に興味深いのではないでしょうか。
本書では、ロゴのみにフォーカスが当てられていて「どうして、こういう表現をしているのか?」等々、小林さんの経験や深い洞察を通して学ぶ事が出来ます。

スープを飲んだ後、使ったスプーンの形がありありと思い出せるようなら、そのスプーンのデザインは悪かったということだ

この言葉は、本書にも登場するアドリアン・フルティガーさん(書体デザイナー)の言葉です。
とてもハッと気付かされる深い言葉ですね。

ロゴを作る時にも、デザインをする時にも、ついつい個性にこだわり過ぎて、本質を見落としていた。
なんて言うことは良くある事です。
デザイナーが“作品性を高めよう”と、エゴに走ってしまうこともありがちですので、デザインに大事な“バランス感覚”を見失ってしまわないようにしなければなりません。

有名なブランドの中には、既存のフォントを使用されたものも少なくありません。そして、そのロゴが100年に渡るブランドの繁栄を支えていたりするのです。
その事からも、オリジナルかどうか?という事が目的になってしまわないように、目的に応じて既存の書体が選択肢に入っていても良いという事が良くわかると思います。

フォントに関するへんな噂や思い込み

Futuraという有名なフォントがありますが、日本で「ナチスの書体だから、使うのはタブー」なんていう噂があったようですが、それもアッサリと否定されています。

僕も実際にデザインをしていて、変な思い込みをされている方をよく見かけ「勿体無いなぁ」と感じることが多いです。

極端な例ですが「明朝体はダサい」とか(結構あるんです)。
ダサい書体というのは、使い方がダサかったり用途に合っていない為なのですが「書体が悪い」と思い込んでしまったり、単純に好みの場合もあります。

好みの場合は、好みに応じた対応をする必要があると思いますが、クライアント様の勘違いや思い込みに対しては、プロとし正しく導いていく対応をする必要があったりします。
それには、こういった書籍を読んで得た知識が役に立つこともありますので、読んでおくと良いと思います。

何よりも、我々デザイナーが変な思い込みをしないようにする事が一番大事なんだと改めて思わせてくれました。

やっぱり最後には書体に対する愛

読了後は、デザイナーとして背筋が伸びる思いでした。また、改めで書体に対する思いと愛情が深まった気がしています。

バカみたいな結論で恐縮ですが、デザインにもタイポグラフィーにも必要なのは“愛”です。
そう思わせてくれる良書です。

この本について

題名
フォントのふしぎ ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?
著者
小林章
デザイン
祖父江慎+福島よし恵
発行
株式会社美術出版社
発行日
2011.1.7

ディック・ブルーナのデザイン

2014.04.13

ディック・ブルーナのデザイン

ミッフィーの産みの親として有名なディック・ブルーナさんは、絵本作家と思われがちですが(僕もそう思っていました)、元々はグラフィックデザイナーでした。

10代の頃には画家を目指していたそうで、そこでデッサンの基礎を学び、やがてデザインと出会うと、ポスター制作や、本の表紙デザイン等を手掛けるようになったそうです。

ディック・ブルーナさんのデザインの特徴はなんと言っても色づかいの美しさです。
そしてシンプルでパワフル。
なによりも、デザインを楽しみ、愛していた事が伝わって来ます。

究極のデザイン

「いっさい文字がないものこそが、究極のポスターです」
ディック・ブルーナさんの言葉です。

その言葉が表すように、ディック・ブルーナさんのデザインはとてもシンプルです。
だからこそパワフル。

シンプルなデザインを目指すデザイナーは数多くいますが、それを行う事はとても難しい事です。
極限まで余計な物を削ぎ落としながら、大事な「メッセージ」まで削ぎ落とさないギリギリの所を見極めるバランス感覚が必要だからです。

一般的に依頼者は、出来る限りのメッセージを顧客に伝えたい。と考えます。当然ですが。
そして、情報を詰め込み過ぎた結果“見たくならないデザイン”になってしまう事は、とても多く見られます。

本当はもっとシンプルにすべきだ。という事は殆どのデザイナーが知っています。
ただ、それを行うには、クライアントさんとの話し合いの段階から、情報をまとめ、方向性を1つにまとめあげ、説得する能力が要求されます。

ディック・ブルーナさんの凄さは、きっとそういう辛抱強い話し合いをした結果、産まれたんだろうな。と、想像しています。
※勿論、時代背景や印刷技術といった物も背景にあると思いますが。

ミッフィーを描く手順から

本当にシンプルな線と、僅かな色だけで描かれたミッフィー。
描いて見るとわかるのですが、とても難しいです。

そして、例えばミッフィーの絵をグラフィックソフトのパスでトレースしてみても、この雰囲気は出ません。
この線の微妙な震えや、強弱は、人間の手から産み出されたものだからです。

ウェブでは特に、最初から最後までモニター上でデザインする事が多いと思います。
だけど、どうしてもデザインに温かみが出ない。とか、いいんだけどどこか淡白だな。と感じる時、モニターから出てみる事で解決する事があります。

例えば、作った線を一度プリントアウトし、それをスキャナーで取り込んでみる。
すると、紙の繊維のにじみや、掠れ、微妙な濃淡の違い等、本当に微妙な差ですが、デザインに温度感が出たりします。

この本を見て一番に思った事は、「デザインに対する愛情」の大切さです。
“あと一手間”というのは、淡々とこなして行くと省略しがちです。
スケジュールに追われていると、つい省略しがちな“一手間”を忘れないようにしたい。そう思わせてくれる一冊でした。

この本について

題名
ディック・ブルーナのデザイン (とんぼの本)
発行者
佐藤隆信
発行所
新潮社
発行日
2007.7.25

日本のロゴ―企業・美術館・博物館・老舗…シンボルマークとしての由来と変遷

2014.03.03

日本のロゴ

ロゴというものは、企業や商品の顔としてデザイナーのみならず、普段見ていても至る所にあるものです。
私たちは、特に意識していなくても、文字通り企業、商品の顔として、そしてそのもののイメージとしてロゴを捉えています。

好きなロゴ、嫌いなロゴ、一回見たら忘れないロゴ。その違いは一体なんでしょう?
本当に小さいパーツですが、それをデザインしようとしたら本当に難しいものです。
なんの変哲も無い会社名だけのロゴタイプだったり、単純なマークだったり。
しかし、その中にデザインのあらゆる要素が詰まっています。

この本には、様々な企業のロゴが沢山掲載されています。
少しの解説と、ロゴ。それがこの本の中身です。
多分、デザイナー以外の方は殆ど見ないかもしれませんが、デザインを志すものにとって、非常に見応えのある本です。

ロゴのコンペに思う事

この本とは直接関係のない話ですが、最近ではインターネット経由で企業がデザイナーに仕事を依頼出来る仕組みが当たり前のように使われています。
そこで良く見かけるのがロゴのコンペです。

自分も、起業したての頃は練習や腕試しの為に参加したりしていました。
でも、そのうち、間違っている事をしている気になり、やめました。

ロゴのコンペは、企業側から簡単な会社の説明があり、どんな形が好みか?どんな意味を込めたいか?という限られた情報だけを見てクリエイター達がそれぞれロゴを提出し、クライアントの好みの物があれば、それを採用しギャラが振り込まれる。という仕組みになっています。

企業側は安価にロゴが作れ、クリエイター側は多くの仕事の中から、自分の向いていそうな仕事を選べる。悪くはない仕組みです。
しかし、それだけの情報だけで作られたロゴを掲げる会社の行き着く先は?と疑問に思うようになりました。

ロゴとは

ロゴとは、前述のように企業の顔です。
その大事なロゴをコンペで会った事も無い人の為に、書かれた意味を付与したロゴを作る。その事に対して、どうしても気持ち悪く感じて来ました。不誠実だと思ったからです。

誠実だったらいいのか?というのは個人的な問題ですので、コンペをしている企業にもデザイナーに対しても、特に不快感を持っている訳でもないのです。ただの好みの問題だと思っています。

ただ、僕はデザイナーとして、その企業や商品の本当の良さや、進むべき方向を出来る限り考え、それをロゴに表すべきだ。と思うようになりました。
クライアント様と話し合い、手を動かし、試行錯誤を重ねる。
その作業の中で、クライアント様が何かが見えて来たり、そのロゴに愛着が湧いたり。
自分の顔を作る訳ですので、クライアント様も真剣だし、デザイナーも責任重大ですし、とても難しい仕事です。

しかし、そうやって出来上がったロゴが、企業の理念を映し出し、企業を導くものとなっていくと信じています。

ロゴ作りでよく使われるもの

この本を読んで沢山のロゴを見ていると、
斜体:スピード感、躍動感、近代的、シャープさ とか
球体、丸囲み:地球、太陽、愛、繋がり、グローバル、安心感 とか、
傾向が見えて来たりします。

球体なんかは特に多く出て来て、ロゴに使用するには非常に便利です。
ただ、大切なのは「便利だから丸で囲んどこう」とか、「太陽?じゃあ球体ね」という風に安易に結びつけるのではなく、「何を込めるべきか?」を考え抜いた末に、そういう形になっている。という事です。

ロゴという物は、色んなモノを1つにまとめて表現する為、極限までのデフォルメが必要だったりします。そうすると、斜体が多くなったり、球体が多くなったり。
でも、そこに込められたものは様々で、それを考えていく過程は本当に濃密であり、そこから出来上がったロゴは本当にパワフルだと思います。

1つ1つのロゴを、どんな事を考えて作ったのか?考えながら見ると、とても面白い本です。

この本について

ぼくのつくった書体の話 活字と写植、そして小塚書体のデザイン

2014.02.22

小塚昌彦 ぼくのつくった書体の話

デザイナーにはとても馴染みの多いフォント【新ゴ】【小塚明朝・ゴシック】を作り、僕も大好きな明朝体【リュウミン】の監修等にも関わって来たタイプデザイナーの小塚昌彦さんの本を紹介します。

活版印刷の時代から写植。そしてデジタルでのフォント制作まで関わった小塚昌彦さんの歴史は、そのまま日本の活字の歴史と言っても大げさではないかもしれません。

小塚昌彦さんの自伝的な本

この本は前述の通り、50年以上書体作りに関わって来た、小塚昌彦さんの自伝的な内容となってます。
その内容はとても濃く、とても夢中になって一気に読み進める事が出来ました。

フォントデザイナーや種字彫りの職人達が、丹精を込めて作って来た書体があるからこそ、今の書体達があります。
そして、その結果として、我々デザイナーはとても美しいフォントを使う事が出来ます。
この本を読む事によって、デザイナーとしてのフォントへの気持ちはきっと変わると思います。

勘違いによって生まれたゴシック?

とても面白かったのが、活版印刷〜写植へと、フォントの制作過程が変わって行く話、活字職人達の勘違いによって産み出されるゴシック体があったそうです。

詳細な内容は書きませんが、勘違いによって産み出されたフォントが、デザイナー達に「インパクトがある」として受け入れられていったり。
そんな微笑ましいエピソードも、長い間フォントに携わった小塚昌彦さんだからこそ知っている、面白い話の1つでした。

書体作りの大変さ

欧文書体は、最小の“OpenType Std”だと243文字。“OpenType W2G”だと890文字もあれば、1つの書体が出来ます。
一方、日本語書体は最小の規格でも8,000字余り。多いものだと20,000字以上に登ります。
欧文書体を作るのが簡単だとは言いませんが、日本語書体を作る大変さは、文字数を見ただけでもわかります。

しかも、日本語は縦組、横組があり、漢字、平仮名、片仮名、欧文を組み合わせて使用されるという、複雑な事もあり、1つの書体として完成させるのは非常に難しいのだと思います。

僕も文字組をしていて「うーん」となる事はよくあるのですが、日本語を横組にした際に流れが悪かったりすることはありませんか?
小塚昌彦さん曰く、日本語書体の横書きにはまだ課題があると、後に続く書体デザイナー達へのメッセージとして綴られていました。

書体の未来の事を想い、この本を書かれたのだなー。と、どこまでも書体の事を思う小塚昌彦さんに感動でした。多分、後継者達へのメッセージを含めて、この本を書かれたのではないでしょうか。

書体への愛情が増しました

【新ゴ】【小塚明朝・ゴシック】【リュウミン】は、とても使いやすく、今までも沢山使わせて頂いている好きな書体でした。
そして、この本を読んだ事によって更に愛情が増しました。

書体のバックグラウンドを知る事により「どんな想いで作ったのか?」を知る事が出来ます。
そして、僕らデザイナーは「こういう想いがあるフォントをここで使う」という理由が生まれます。
そうする事により、タイポグラフィーは更に美しくなり、人の気持ちに届くデザインに一歩近づける気がします。

フォントというのは、買うと本当にビックリするくらい高いですよね。
でも、フォントを作る沢山の苦労を知り、美しいフォントがある有り難さを知ると、決して高くないとわかります。
そもそも、自分が一人で書体を作る事を考えたら、その人件費だけでも莫大なものになります。

繰り返しになりますが、フォントデザイナーさんがいるから、僕らデザイナーは美しい書体が使用できます。
感謝し、そのフォントを汚さないように気を引き締めたい!と、この本を読んで強く思いました。

ぼくのつくった書体の話 活字と写植、そして小塚書体のデザイン

デザイナーとして起業した(い)君へ。成功するためのアドバイス – Work for Money, Design for Love

2014.02.15

デザイナーとして起業した(い)君へ。成功するためのアドバイス

本のタイトルが長くて、入りきりません。。。しかも、タイトルだけを見ると僕が言っているよう(偉そう)に見えますね。まぁいいか。
今回紹介する本は“デザイナーとして企業した(い)君へ。成功する為のアドバイス”です。

この本は、David Aireyという方の著書になります。
とても面白く読めましたので、紹介させて頂きます。

あらゆるデザイナーに

この本は、タイトルの通りフリーのデザイナーに向けて書かれています。
現在フリーでデザイナーをしている人。そしてこれからフリーでやって行きたい。というデザイナーの方は勿論ですが、会社員としてデザイナーをやっている方にも読んでもらいたい一冊だと思いました。

僕は、現在はフリーでWEB/グラフィックデザイナーとして活動しています。
だけど、会社員時代から今の意識を持って仕事をしていたら、もっと違っただろうな。と思います。
もちろん会社員の時も、僕なりに一生懸命やっていました。
でも、根本的に“独立すると、こういう所が会社と違う”という事を知っているのといないのとでは、雲泥の差があると思っています。

内容にうなずきまくりでした

読んでいると、僕も味わった事のあるようなシチュエーションがとにかく沢山出て来ます。
「皆一緒なんだなぁー」と、納得したり安心したり。うなずきまくりでした。

本の帯に書いてありますが、

  • 新しいクライアントをどうやって見つけるの?
  • デザイン料はどのくらいに設定すべき?
  • 厄介なクライアントの対処法を教えて!

等々・・・これから起業したい人が聞きたい事が、フリーでやっている人にしかわからない視点で親切に書かれています。
ただし、この方は日本の方ではありませんので、文化の違いもありますので、実際に日本で同じやり方は無理だろうな。という事も多少あります。
それでも、基本的な考え方に違いはありませんので、大いに役立つと思います。

クライアントを賢く選ぼう

これは、この本の第十七章のタイトルですが、個人的に非常に共感しました。

自分も色々なクライアントさんと仕事をさせて頂いて、大変な目に合った事があります。
ギャラを未払いなんていうのは序の口です。
デザインを制作し納品したら、その作品が詐欺の道具にされる。なんて言う事もありました。

勿論デザイナーの立場では、本当に何に使うか?という事まではわからない事はあります。
それでも、知らなかったから罪にならないか?というと、そんな事は無いと思います。※犯罪にはならないかもしれませんが。
自分のした仕事に責任を持つ為にも、クライアント様の事は十分に知る必要があります。
そして、フリーランスの場合、自分を守れるのは自分しかいませんし。

そして、クライアント云々というよりも、第一に自分自身がフリーのデザイナーとして、“どんな仕事がしたいか?”という事を考えるのが一番だと、より強く思いました。

クライアント様とのやり取りは、実例の数だけ学びがありますが、経験者が実例を挙げて語ってくれる事はとても貴重な事だと思います。

方針を迷っている人へも

この本を読んでも、自分の経験からも、一番重要なのは「自分の方針」なんじゃないかと、あらためて思いました。
デザイナーと一言で言っても、色々なタイプがいますよね。
その全ての人に当てはまるやり方はきっとありませんし、それは自分で探さないといけません。

この本を読むと、きっと何かのヒントが得られるのではないかと思いました。
僕もまだまだこれから頑張って行かないといけないのですが、これからフリーでやって行こう!という方には本当に頑張って欲しいです。
一緒に頑張りましょう!

オススメの一冊です。

デザイナーとして起業した(い)君へ。成功するためのアドバイス – Work for Money, Design for Love

Typographic Systems―美しい文字レイアウト、8つのシステム

2014.02.09

typographic systems

今回は「Typographic Systems」という本を紹介致します。

本のタイトル通り、タイポグラフィーに関する本ですが、純粋にタイポグラフィーの解説本。というよりも、どちらかというとページ1枚でのレイアウトにフォーカスされた本となっています。
副題は“美しい文字レイアウト、8つのシステム”とあり、実際にある作品や、学生による試行錯誤の図説を用いて解説されています。

どんなシステムかというと

世の中にあるレイアウトを、この本では以下の8つに分けて解説されます。

  • 中軸システム
  • 放射システム
  • 拡張システム
  • ランダム・システム
  • グリッド・システム
  • 転調システム
  • モジュールシステム
  • 左右対称システム

となっています。グリッド・システムや左右対称システムはなんとなくわかりますが、他は何の事かさっぱりわかりませんね。
でも読んでみるとそんなに難しい事はなく、実例として図解がありますので、スラスラと読み進められます。

あらゆるレイアウトに

この本は、基本的にはポスター制作を中心に解説されています。
でも、読んでみて思ったのは、あらゆるレイアウトに適用出来ると思いました。
Webサイト、バナー制作、文章作成等々。レイアウトに関する事全てに役に立つと思います。
ここで言うシステムは「このシステムを使えば、ポスターが出来る」という単純な物ではなく、基礎となる考え方を示したものとなっています。

本の流れは、基礎となるシステムの定義を行い、数人が同じ条件でデザインをし、試行錯誤(初期デザイン、中期デザイン、後期デザイン)している例が紹介され、解説する。という流れになっています。

デザインの学校のように

同じシステムでも人によって全く違うデザインが出て来る事も面白いのですが、初期デザイン〜中期、後期デザイン。と進むに連れて洗練されて行ったり、より混乱して行ったりする様がまた面白いと思いました。

まるで、学校で授業をしているかのような感じ。と言いますか。
社会人となり、デザイナーとして働いていると、同じ定義の中で複数人が作品を制作し比較する。という事もなかなか出来ませんが、このやり方はデザインという“答えの無い”作業の勉強方法としては、非常に優れていると思います。

誰かの失敗は、同時に他の誰かの失敗として蓄積され、逆に誰かの成功は、他の人へ刺激を与え成功へと導きます。
この本は“単純に解説を読んで覚える”というより、解説を見つつも様々な作品の試行錯誤から学ぶ事が多いと思いました。

何度も読んでみるといいかも

この本は、前述の通り作品から学ぶ事が多いです。
その為、次に読んだらきっと違う事を感じたり、前回に気付かなかった事が出て来るのではないかと思います。
2回目からは自分も生徒のような気持ちで参加してみる。というやり方も面白いかもしれません。
興味のある方は、是非読んでみて下さい。

Typographic Systems―美しい文字レイアウト、8つのシステム

唐草抄―装飾文様生命誌

2014.02.02

唐草抄―装飾文様生命誌

今回も本のお話を

「唐草という文様を知りたい。」ある時期に強く感じていました。
唐草というものは、曲線を蛇行させた茎を中心に、枝、葉、花が絡み合いながら反復・連続・変形・増殖をしながら、生命のリズムを表した文様です。
デザイナーとして使用する機会が多い割に、あまり掘り下げられずに使われているような気がします。
どのようなルーツのものなのか?国による違いは?という疑問が常にありました。

まさにそんな事を思っている時に、この本と出会いました。
古本屋さんに無造作に置かれていたのですが、このピンク色をベースに、玉虫色の唐草があしらわれた美しい装幀は、凄まじい主張で呼びかけていました。

内容は、当たり前ですが期待通りの唐草に関すあらゆる事が書かれています。
図版が豊富に使用され、大変分かりやすく読む事が出来ました。

唐草宇宙の広がり

唐草の誕生はとても古く、古代のエジプト時代に始まるという説があるようですが、正確にはわかっていないようです。
どちらにしろ数千年の歴史を持つ文様です。

生命を表す唐草のエネルギーは、誕生以降各地に広がり、土着の文化や植物、宗教を取り込みながら、今の時代まで変化し続けています。
人が文明を持ち始め、美を意識した際に生まれた根源的なエネルギーが、今なお変化し続け広がり続けています。
中には「これも唐草というのか」と思うような物もあり、唐草を一言で定義する事は難しそうです。

モチーフは植物、動物、人、器、等々あります。
王道は自然界の法則に則って作られる事が多そうですが、その中でもデフォルメしたもの、写実的なもの、自然界のルールをあまり気にしていないもの、と自由なものです。

自分が手にしたきっかけとしては「この唐草はどこの国のだろう?」とか、「こういう雰囲気にこの唐草は使えるのかな?」とか、職業的な疑問が中心でした。
しかし、この本を読んでそもそもそういう考え方がおかしいのではないか?と感じました。

勿論、その時代にその土地で作られた唐草を、その時代のデザインに当てはめる事は間違いではありません。
ただ、そういう頭でっかちな物として捉えるよりも、その土地、その時代に合った唐草を考える事がより重要であり、ただの定型の文様として捉えない方がより唐草らしい。という事です。

唐草の意味

現在はインターネット、書籍等を使用し、あらゆる場所のあらゆる情報が手に入ります。
「アメリカのテキサス州メンフィス」の唐草を作りたい。と思えば、そこに生えている植物を調べ、文化を調べて作る事も出来ますし、「空に浮かんでいる月の静かの海」の唐草を作りたい。と思えば出来るかもしれません。※殆ど石になりそうですが。

しかし、知識だけで唐草を作ろうとすると、大切なエネルギーやその土地の空気。という部分にまでは到達出来ず、唐草の形をした唐草的な物しか出来そうにありません。
それなら寧ろ開き直って、アメリカのテキサス州メンフィスの蔓に、スペインのモンテ・ゾンコランにしか咲かない花が咲いている。というようなインターネット唐草的な唐草も、現代的という意味で“あり”なのではないかと思います。

唐草の加速

現在の情報量や、文化のごた混ぜ度というのは、古代エジプト時代から脈々と広がって来た唐草の増殖度を、急加速させたのかもしれません。
きっとこれからも唐草という文様が広がり続ける事は明白です。※前述のインターネット唐草も含め。

文様としての美しさ。エネルギー。込められた意味。
「2000年代のインターネット唐草は、最も唐草が醜くなった時代だ」と、3000年代の人達に言われないように、素敵な唐草を作りたい。そう思いました。

唐草抄―装飾文様生命誌

タイポグラフィ・ハンドブック

2014.01.26

タイポグラフィ・ハンドブック

デザインをする上で欠かせないものの1つに、タイポグラフィがあります。
人に何かを伝えたい時に一番便りになるのが言葉ですし、何かを読んでもらいたい時には、人が「読みたい」と思わせる事が大切になります。

「このデザイン、特に変わった事をしてないのにかっこいい」とか「高級に見える」とか思うと、タイポグラフィが関わっていたりする事が多く、デザイン全体の方向性を決める上でもタイポグラフィは重要な要素ですよね。

しかし、プロのデザイナーの中でも、タイポグラフィの事をよく理解していなかったり、軽視している方も多いように思います。
特にWEBの世界では、テキストはOSやブラウザの仕様に依存される事が多い為、意識が低くなってしまいがちです。
かく言う自分も、元々がWEBから入った事(一番の要因は不勉強な事ですが)もあり、適切なタイポグラフィを学ばずに、ぼんやりとした知識で長い間やっておりました。

そんな時に出会ったのがこの本でした。
非常に内容の濃い本ですので、初心者〜上級者まで楽しく読めるのではないかと思います。

タイポグラフィに関する情報を網羅

本の帯には「これまで勘や感性だけで組んでいたものに、「理屈」をプラスする便利な一冊。」と書かれていますが、まさにその通りの内容となっており、まさに自分が求めていたものだと思いました。
また、理屈一辺倒になりがちな内容ではありますが、文字に対する愛情や面白さ。と言ったものが随所に感じられ、自分のしている「デザイナー」という職業がより好きになるきっかけともなりました。

「タイポグラフィ・ハンドブック」は、グラフィックデザイナー、タイポグラファーでもあり、数々の素晴らしい経歴を持つ小泉 均さんの著書になります。

第一章の「アルファベットを見る力と各グリフの特徴と名称」から始まり、全部で8章から構成されており、全て読めばタイポグラフィに対する理解が相当高まります。
普段当たり前のように扱っているフォントですが、そもそもの歴史や、どのように作られたか?と言った事も書かれており、非常に読んでいて面白かったばかりでなく、実際にタイポグラフィを行う上で大事な情報だと感じました。

欧文だけでなく、和文に関しても

タイポグラフィをする上で、アルファベットと和文を組み合わせた時に「うーん」となる事が多かったのですが、この本ではその辺りの事にも言及されていて、とても役に立ちました。

和文は、元々タテ組が基本とされ作られた文字です。
しかし、時代の流れとともに横組にも対応する必要が生じ、タテヨコに複雑に使い分けなくてはなりません。

そこで大事なのが、欧文、和文の仕組みの違いを知る事になりますが、その辺りも非常に分かりやすく書いてあり、とても役に立ったと思います。

デザイナーのベースアップには最適の本です

この本を読んだ瞬間に、タイポグラフィが上手くなる訳ではありませんが、確実に「タイポグラフィ」に対する意識に違いが出ると思います。
そして、タイポグラフィに対する意識が変わると、デザインを見る時にポイントがより明確になり、よいタイポグラフィという事が少しずつ分かって来て、デザイン全体のベースアップに繋がります。

まだまだ僕は未熟で、迷う事も多く、この本にはお世話になっています。
この本に「答え」は書いてありませんし、自分なりのスタイルを見つけないと駄目だとは思いますが、その手助けをしてくれる良書だと思います。

機会があれば、是非読んでみて下さい。

タイポグラフィ・ハンドブック

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