潮の満ち引きのA1

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2023.11.01

2023年11月のニュース

10月になった途端に、急いで季節を進めたかのように涼しくなってきました。「はやく秋らしくしなくっちゃね」「うーん、まだいいんじゃない?」「いやダメだよ、ここは日本だよ?」と、等高線とは別の所で、風たちによる話し合いがされているかもしれません。日本の気候は日本人の傾向に倣って几帳面ではなければならない。と、今年の方針は決定されたのかもしれません。うん、今年の方針には賛成です。でも、徐々に変わっていくのも良いですけど。

朝晩が冷えるようになったことで、我が家のシマトネリコのカメムシ達は、一気に数を減らしました。「どこへ行ってしまったんでしょうね?」と道を探し歩いていると、漂ってくるのは金木犀の香り。同じ匂いでも、カメムシと金木犀では大違いではありますが、自分の中では同じように秋の風物詩となりつつあるなぁ。なんて考えながらふと立ち止まった街中で、美味しい秋刀魚のことを考えていたりします。そう、それが秋です(相当やばいな)。

そのように、季節を毎年繰り返すことにより、いろいろなことを思い出させてくれたり、何かを乗り越えたりを潮の満ち引きのように繰り返して、我々は生きています。ただし、段々とその繰り返しを感じる心もようは、歳を重ねるごとに変化してくるようです。今までの経験の数が毎年増えていくからです。そのことがポジティブなことなのかネガティブなことなのかは、人それぞれでいいし、それぞれに美しさがあるのではないかと考えています。そう、生きている事ができれば、まずまずだと言えるのではないでしょうか。

海の波が、満ち引きを繰り返すことを思い出してみると、一つ一つの波の意味をうかがい知ることは出来ませんが、全体としての循環に意味があることは、なんとなく理解は出来そうです。最後には太陽に飲み込まれるとしても、それまではせめて、その繰り返しの一部として、人生の満ち引きを全うできたらいいんじゃないでしょうか(ポジティブなんだかネガティブなんだかわかりませんね)。

秋、とても好きな季節です。目一杯楽しみましょう。

今月のFONT紹介は“A1 明朝”です

フォント紹介と言うと偉そうなんですが、自分の勉強の為に毎月書かせて頂いています。意見も個人的な意見となりますが、良かったら読んでみて下さい。

「また“A1 明朝”かよ」と仰るのもわかります。だってなんと3回目の登場になりますから。しかも、今年の七月にご紹介したばかりです。では、「なぜまた紹介するのか?」と言いますと、新しいウェイトが出たからです。わー。パチパチパチ。七月のご紹介時に「ウェイトが増えたらいいのに」と書いたら、その三ヶ月後に発表されるというタイミングの悪さ(良さ)。なので、今回は10月18日に発表されたての、新ウェイトを紹介いたします。楽しみー。

AP-OTF A1明朝 StdN(上からR,M,B)

A P-OTF A1明朝 StdN R

A P-OTF A1明朝 StdN M

A P-OTF A1明朝 StdN B

新しく追加されたウェイトは2番目のMと3番目のBです。
おぉ!見事にA1明朝のまま太くなっています(涙)。まさに、今まで感じていた「もう少し太いウェイトもあったらなぁ」という願いを叶えて下さった今回の発表には、個人的に大興奮でしたし、実際に書体をダウンロードして文字を入力してみた時の興奮たるや、大変なものでした。

また、今回の変更はウェイトの追加だけではなく、名前も「A-OTF A1明朝」から「AP-OTF A1明朝」に変わっていますが、これは、ペアカーニングが追加されたり、使い勝手も向上していることを意味します。ばんざーい!

A P-OTF A1明朝 StdN 縦書き

縦書きはこんな感じです。わーい!(解説しろ)

さて(解説しないのか)、今回のウェイト追加&改訂には、もう一つ目玉があります。

A P-OTF A1明朝 StdN 欧文書体

そう、欧文書体が大幅に変わっています。上が新。下が旧です。
もう全然違います。小文字のeが傾いていたり、個性はありつつも、全体的な作りは、xハイトが低くなり、より正統派なローマン体になった印象があります。欧文のみでもなんだかかっこよくて、欧文目当てでも使ってしまいそうです。

A P-OTF A1明朝 StdN 混植

こちらも上が新。下が旧です。
全然違いますね。ペアカーニングが効いていて、日本語と英語に切り替わる部分もスッと入ってきます。”T”と”o”の間も、詰めずに済みます。こうして違いを見てみると、文字の形もそうですが、文字詰めの大切さがわかりますね。同じことが書いてあっても、性格が違う人が言っているかのような違いがあります(行ごとに隠して見てみると、違いがわかりやすいと思います)。

いやー。進化してましたね。モリサワさま、ありがとうございます!。我々デザイナーが、デザインをする上で欠かせない書体ですが。その進化は、まさにデザインの質に直結する大切な要素ですから、本当にありがたいことです。そして、フォントが進化すると、知識のない人が組んでもそれなりにかっこよくなりますから、デザイナー泣かせな部分はあるのかもしれませんが、世の中に良いものが増えていくことは大変良いことだと思いました。大賛成!

さて、秋です。ここから年末に向け、駆け足で進んでいく感じになるのかもしれませんが、せっかくの秋ですから、ゆったりと楽しんでいきたいですね。あれ?そういえば、コロナウィルスっていうものはもうなくなったんですか?コロナウィルス騒動になってから、初めてのそれを意識しなくても済む年末になるんだとすると、それは本当に良かったなぁ。と思います。
皆様が健康でありますように。

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