1月の終わりの東京は、見事な寒気ですっぽりと覆われ、厳しい寒さが続きました。中でも24日は嵐のような強風で、事務所のシャッターがめくれ上がり、横殴りの雪の中シャッターを直す羽目となりました。とはいえ、そう言う状況を楽しいと感じてしまうのは子供の頃からで、災害時に真っ先に被害に遭うタイプでありながら、なんとか生き延びてこれた事には感謝しかありません。
ここ数日の寒さは大変厳しいのですが、それでも幼少期に感じた、肺が苦しくなるような寒さではないな。と思ったりしました。実際に気象庁の過去のデータを見ても、若干、真冬の平均気温が上がっている事を示しておりました。
気になったらデータをすぐに引っ張り出せることは、自分の思い込みか?はたまた真実か?といった時には大変有用でありますが、友達と「えー、どうだったけねぇ」なんて言う暇もなく会話が終えられることは、良いことのような?ぃゃ、良いことですね。
世界中の膨大なデータが日々蓄積し続けておりまして、平均気温は確実にデータとして見られますし、自分の誕生日の最高気温や最低気温まで、調べようと思えば簡単に調べられる時代です。ちなみに自分の生まれた日の東京は、最高気温が27.7℃、最低気温17.2℃だそうです。天気は晴れ。
そのような、グラフで表せる情報はもちろんですが、我々の個人的なデータもSNSや、パソコン、スマートフォン、はたまたクラウドに蓄積されていきます。それらはいわゆる、その時点の記録として残っていくのですが、そこには微かな温もり(あるいは苦しみ)のようなものが、わずかに漂う程度のものであり、実際の温もり(あるいは苦しみ)は、体験した本人たちのものである事は間違いありません。ただ、個人的な記憶に実測値が加わる事で、その日のことを鮮明に思い出したりする事も可能で、本人にしかわからない程度の漏洩危険度の低い情報でありながら、記憶と結びつく事によってのみ呼び出し可能な情報として利用する方法が考えられます。例えば、「あの日はとても寒い中、友達と深夜まで人生について語り合ったけど、何を着ていたんだっけ?」。とかとか。語り合った内容は脳内に、それ以外の情報はSNS。のように複数媒体に記憶が分散しているという状態を作り出せます。
我々の持つ“古皮質”“旧皮質”“新皮質”を繋ぐ、か細い伝達システムから解放され、大容量データを大量にさばく外部記憶による記憶革命が始まっています(謎の飛躍)。
思えば、カーナビなんかもその一種で、限りある記憶媒体(脳)に地図を覚えることをさせず、外部記憶に任せ、それ以外の有益な事の為に脳を使う事が可能になる素晴らしいデバイスです。また、スケジュール管理にも、自らの脳でスケジュールを覚えることを放棄し、ツール(僕はOmniFocusを使っています)に記憶は任せることで、自らの能力を向けるべきポイントに集中することが可能で、自分はそのおかげで殆どスケジュール管理に悩んだことがありません。
これは、例えば健忘症やアルツハイマーの方なんかにも応用が可能なんじゃないだろうか?というのは飛躍しすぎかもしれませんが、そういう事が実際に可能な段階まで、技術は発展しているのではないかと思います。ただ、そうすると記憶はより正確に、クリアになり、思い出を美化したり、誤魔化したりできなくなる事に対して、不完全である我々人類がどこまで耐えうるのか?という事には大変興味があります。というか何の話でしょうね。これ(苦笑)。
最近、こういうしょうもない内省の話が多いな。と思いますが、、冬は夜が長く、内省的になりがちな季節なのでご勘弁を。
フォント紹介と言うと偉そうなんですが、自分の勉強の為に毎月書かせて頂いています。意見も個人的な意見となりますが、良かったら読んでみて下さい。
今回紹介するのは“Caslon”です。代表的なローマン体で、デザインを生業にしている人なら必ず目にしたことのある(かもしれない)書体であり、あらゆるメーカーから発売されている書体です。18世紀に発表され、沢山の派生する書体を生み出しながら、現在まで人気を保っています。
今回は、沢山のメーカーから出されている中から、AdobeとLinotype社のものを紹介いたします。
同じ“Caslon”の名前でも結構印象が変わると思いますが、それは当然の事で200年以上の歴史がある中で様々な派生があり、デジタル化するタイミングで、どの時期の印刷を参考にするか?どの部分(本文or見出し)を参考にするか?ということでも変わるからです。もうそうなったら「全然違う書体」といえるくらい形が変わったりしますが、一応親戚関係という認識になるかと思います。
資料を調べてみると、Adobeは古い文献の本文を参考に作られており、後発のLinotype社のものは、見出しに使うことを目的に作られたようですので、この二社では異なる目的で作られているようです。ちなみに、Linotype製はCaslon 540が細い方で、Caslon 3が太い方で、別々のパッケージとなっています。
“The”を見ていただくとわかるように、Adobeは合字機能があり、見出し用であるLinotype社のものはないようです。また、字形を比較してみると、adobeはxハイト(小文字のxの高さ)が低くなっていて、長い文章を組んだ際に流れで読みやすい設計となっており、一方のLinotype製はxハイトが高く、単語を組んだ時の高さが一定に見え、堂々とした佇まいとなっております。
並べて比較するとAdobeが本文用。Linotypeが見出し用。という役割の違いが字形からも見えてきます。また、ローマン体のイタリック体は見応えがありますが、Caslonも例外なく美しく、Adobeのwとかvとかは、踊っているかのような躍動感を感じさせる素敵な字形をしています。
文字の美しさを眺めていると、「二百年以上愛され続ける理由がわかるな」とかうっとりし始めてしまいますが、うっとりしすぎると、その文字の持つ機能的な部分を見落としてしまったりするなぁ。ということが、未熟者である自分にもわかってきましたし、機能面を追求し続けた結果として、美しかったり格好良かったりするのだと、フォントの奥深さに感動したりするのです。
今回はAdobeとLinotypeの二社での比較を行いましたが、恐らく無料の高品質とは言えないようなものも含めると、なかなかの数のCaslonが集まると思いますので、いつかそういう比較をしてみても面白そうですね。
それでは今回はこの辺で。今月を乗り越えれば、あの美しい春がやってくる。そう思うとちょっとウキウキしてきます。今月も頑張りましょうー。
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