気付けば日がだいぶ短くなり、過ごしやすい陽気となってまいりました。秋です。行き帰りの道すがら、金木犀の香りが漂ってきたりすると、連動して秋刀魚や松茸が頭に浮かんできたりするようになりましたが、でも、松茸はいいとしても秋刀魚の立場で考えてみると、とても怖いことですよね。食いしん坊たちが自分を思い浮かべる季節。。食べられる側は冗談じゃないよ。ということですよねきっと。
それで言いますと、お肉屋さんの看板で、牛や豚のキャラクターが笑顔でお肉を持っていたり、そんなものに対しても少し複雑な気持ちになるのです。デザイナーとして、そういうご依頼をいただいたらどうしたらいいのだろう?肉食を否定するつもりは全くないのですが、自分だったらどうだろう?と考える癖のようなものがありまして、ふとそんなことを思う季節。秋ですね。
今年ももう残すところあと3ヶ月です。あと約90日間で、年始に立てた目標は達成できるだろうか?と確認したり、他に何ができるだろうか?と考えたり、くだらない事を考えたりしつつ、変わらない毎日を過ごして行けたらな。と思っています。
フォント紹介と言うと偉そうなんですが、自分の勉強の為に毎月書かせて頂いています。意見も個人的な意見となりますが、良かったら読んでみて下さい。
今月紹介するのは“Walbaum”。実は随分と前から「紹介したい」と思っていたのですが、なんせ巨大なウェイト構成で尻込みしておりました。紹介の仕方を工夫しないと無理だろうな。と。しかし時は熟した。というか手数を減らして紹介する方法を思いついたので、紹介させていただきます。
“Walbaum”は、19世紀にドイツ人のワルバウム(ヴァルバウム?)さんが作ったモダンローマン体です。書体名は作者の名前です。時代的にはDidotやBodoniより100年ほど後になりますので、それらの発展系としてデザインされたものだと思います。(ウェイトは最近追加されています。自分の拙い英語力では完璧には分かりませんでしたが、極太のウェイトものちに追加されたもののようですので、オリジナルはDidotやBodoniと近いウェイト構成だった可能性が高いです。)
ファミリー展開が独特で、96pt,60pt,18pt,12pt,06ptのように、フォントサイズに最適に使用できるようにデザインされています。なので、そのくくりごとに並べてみます。
いかがでしょうか?紹介を躊躇っていた訳がわかると思います(笑)。しかも、各ウェイトにはイタリック(斜体)も入っております。(イタリックも味のある書体ですので気になる方はご自身でお願いします。)
今回は、ウェイトの太さのグラデーションがより分かりやすいように、あえて全体を揃えずにはみ出させました。全て同じフォントサイズです。細い方から小刻みに太くなっていき、途中から急に太くなっていく様がよく分かります。細い方をこんなに刻む必要はあったのかな?と思いますが、使う方としては選択肢が増えるのはとてもありがたいことです。ファミリーによってウェイト数が異なり、見出し用のウェイトは種類が豊富で、本文用になっていくに連れ、少なくなっています。
ウェイトを見回してみますと、それぞれの下から3,4番目のウェイトが使いやすそうですが、最大の特徴は極太のウェイトに出ていると思います。丸々と太っていてやや可愛い印象を受け、モダンローマンの新しい形として捉える事ができます。96ptとか60ptの太いウェイトのコントラストが物凄いので、出来るだけ意図に沿ったフォントサイズで使用したいフォントです。
とはいえ、“意図したフォントサイズってどれくらいなの?”という事を知りたいですよね。そんな方のために、下に画像を作りました。これはパソコンで見た際に、正確なフォントサイズとして表示されます(スマホでご覧の方は、後でパソコンで見てみてください)
大迫力です。96PTのセリフの繊細さは、正しいフォントサイズで使ってあげないと描画しきれないほどの細さとなっていて、フォントサイズに応じて作られたというこだわりを感じられますね。
読みにくいわけではありませんが、あまりそこを求めるフォントではありません。スタイリッシュに大胆に使ってあげると良さが出そうです。また、本文用には可読性の高いウェイトが用意されていますので、統一されたスタイルで全体に使用することができる点もポイントが高いと思います。
Walbaumは、発表当時にはあまり受け入れられた訳ではなく、数あるフォントのうちの一つとして、今日まで生き残ってきたようです。もちろん、生き残ってきたという点からも、有用なフォントなのは間違い無いのですが、アップデートの成果も含めて、現代にフィットしてきた感じのするフォントだと思いました。爆発的な人気になるには、あまりにも個性が強すぎるのですが、一定の需要があり、今後も使われていくのだろうと思いますし、こういうフォントを知っている事は、デザイナーとしての幅が広がると思いますので、覚えておいて損はないかと思います。
自分が作った書体が、死んだ後にも成長していっている。というのはすごい事ですよね。僕のデザインもそんなふうに受け継がれ、成長していくようなものが一つでも作れているだろうか?と考えたりしますが、きっと狙っては出来ない事なのだろうなぁ。とか色々と考えてしまいます。秋ですから。
さて、今月はこの辺で。
過ごしやすい季節です。本を読んだり、月を見たり、くよくよしたりしながら楽しみましょう。
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