にじむ夏の日

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2025.08.01

EMDesigns 2025年8月のニュース

暑いですね。言いたくないけど暑い。それでもなんとか篭りきりにならぬよう「せめてランチぐらいは」と、出来るだけ外に歩いて出るようにしています。できるだけ歩いたほうがいい。とは言うものの、この炎天下を歩くのが体にいいとは到底思えないながら「出来るだけ涼しい顔をして歩く」というマイルールを設けて、何事もないような顔をして歩いています。
ちなみに長袖シャツです。半袖シャツは着ない。というのもマイルールで、耐えられなければ腕まくりをするのはOKです。このように、美学と呼ぶには足りないくらいのマイルールが108くらいあって、って、それって煩悩じゃないですかぁ。脳がとろけそうですね。

話は全然変わりますが、今月の初めにクレープコロモという青梅市河辺町にある、クレープ屋さんで21gのポップアップイベントを開催いたしました。Tシャツと、コーヒーとクレープのイベントは大変盛況で、沢山のTシャツ達が旅立って行きました。
思えば、自分の作った製品を誰かにご購入頂き、しかも、それを着て街を歩いてらっしゃる人がいる。という状況は、普段室内に篭って幻のようなデジタル空間で架空のデザインをしている自分にとって、実態のある確かな重みのようなものを感じる活動となっております。また、それがブランド名として冠した21g(21グラム)にもピッタリじゃないか。と改めて思います。そのように育っていくブランド名もあるんですね。(人ごと)

もちろん、普段のデザイン業が軽い。と言うつもりはございません(むしろ重い)が、どうしてもデジタル空間のみで構築され、完結し、音もなく消えていく様子を常に見続けていると、それに没頭している自分が、ときどき無に思えたりするのです。なので、デザイン業と、たまにTシャツ屋さん。と言う組み合わせは、結構絶妙なのかもしれないな。と思うようになりました。

マイルールに話は戻りますが、「Tシャツはもう着ない」というのも、ある時期に自らに課していたマイルールでした。ルール制定時の理由は「もうTシャツを着る年齢ではないと思った」という、理由というよりもただの気分じゃないか。という程度のものでしたが、結構な期間をマイルールとして守っていました。その期間およそ10年。そして、そのTシャツ離れの期間が、のちの21gの誕生につながるのです。全然感動的じゃないですが、確かにそこに流れがあって、今思うと必然だったんじゃないかな。と思うのです。大したことじゃないかもしれないけど、それを一生懸命続ける。ということにより、何か続きが生まれたりする力が生まれたりするのかも知れません。ということを、炎天下のにじんでいく意識の中で、考えたりしました(生きる)。

今月のFONT紹介は“秀英にじみ明朝”です

フォント紹介と言うと偉そうなんですが、自分の勉強の為に毎月書いています。意見も個人的な意見となりますが、良かったら読んでみて下さい。

“秀英にじみ明朝”は大日本印刷が作ったフォントで、名前が示す通りにじみ処理がされています。デジタルのキリッとした感じよりも少し温かみを持たせたい時に、一回紙に出力したものをスキャナーで取り込むと、いい感じに滲んでくれるのですが、このフォントはまさにそれです。それをしなくて済むというだけで、とてもありがたい。早速見てみましょう。

秀英にじみ明朝

上から
“A P-OTF 秀英にじみ明朝 StdN”
“A P-OTF 秀英にじみ四号 StdN”
“A P-OTF 秀英にじみ四号太StdN”
“DNP 秀英にじみ初号明朝 Std”
となります。

頭につくアルファベット部分が異なりますが、A P-OTFは規格のことで、DNPは大日本印刷の略です。ややこしいですが、どこから出されているかの違いだけで、同じ種類のフォントです。僕の持ち合わせる“秀英にじみ明朝”関連を全て出した為、このようになっています。ちなみにこの4種類は一つのフォントのウェイト違いというより、別フォントとして独立して存在していて、かなの字形がそれぞれ異なります。一般的なフォントのウェイト違いを兄弟と例えたとしたら、この“秀英にじみ明朝”は親戚という感じでしょうか。

また、“四号”は14ptの見出し・本文中見出し用で、“初号”は42ptで組まれることが想定された大見出し用です。一番上の“A P-OTF 秀英にじみ明朝 StdN”は、かなの装飾がシンプルになっていることから、更に小さい本文用だと思います。
ここでも“初号”よりも“四号”の方が小さかったり、ネーミングに若干混乱してしまいますが、昔から脈々と続いている書体だからこそだと思えば、それも愛おしく感じられます。
ちなみにDTPでは今も使われているそうですが、初号(42pt)、一号(26pt)、二号(22pt)、三号(16pt)、四号(14pt)、五号(10.5pt)という感じになっているようです。数字が増えるほど、フォントサイズは小さくなっていく形です。

肝心の字体ですが、4者ともに結構違いがあって
“A P-OTF 秀英にじみ明朝 StdN”:かなが比較的モダンスタイル。
“A P-OTF 秀英にじみ四号 StdN、四号太StdN”:かながかっこいいオールドスタイル。
“DNP 秀英にじみ初号明朝 Std”:漢字とかな(オールドスタイル)のバランスが変えられています。
という感じになっています。
それぞれ、想定される文字サイズによって、にじみ処理の具合が調整されていて、並々ならぬ“にじみ愛”が感じられます。

秀英にじみ明朝 欧文

秀英にじみ明朝 混植

欧文と混植はこんな感じで、こちらもにじみ処理がうっすらされているローマン体となっています。にじみ処理がされていることから、他の書体と混植するのは難しいのですが、現状でベストマッチなので他の書体を探す必要もないかと思いました。

秀英にじみ明朝 縦書き

縦書きは、四号太で組んでみましたが、堂々とした佇まいがあり、かなの筆運びもかっこいいですね。細い方で組んでももちろんかっこいいです。「な」の形とか、天才ですか。「る」も最高。
次は長文を見てみましょう。

秀英にじみ明朝 長文

長文は四号の細い方で組みました。流れがあって大変読みやすいです。文学系出版社が、本文組版やタイトルに採用していたりすることからも、実用性があることがわかります。そして、人に訴えかける温もりのような雰囲気がありますね。

さて、“秀英にじみ明朝”をご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。にじみ処理はもちろんですが、秀英体の持つ字体の素晴らしさが伝わるといいな。と思いながら紹介しました。個人的には、日本語の持つ流れるような美しさ、縦でも横でも読める機能性を引き出す、美しいフォントだなぁ。と、感心しきりでした。心して使わせて頂きます!

暑い日々が続きますが、おそらく地球では、暫くこれが標準的な“夏”なんだと諦めるしかなさそうです。いつまでも異常とか言ってられません。むしろ暑さを積極的に楽しむぐらいの気持ちでいるのもいいですね。例えばどれだけ厚着するか?とか。「今日は俺、ダウンジャケット着ちゃったよ」とか。多分死んじゃいますけど。あ、でも最近はファン付きのジャケットを着ている方も多く見かけますね。割合としては、野外作業の方が多いですが、普段着として着られている方も見かけるようになりましたし、これからはあれが夏の定番になっていっても全くおかしくないですね。
それでは、今月はこのへんで。くれぐれも身体に気をつけて、水分・塩分をとって、標準的な夏を楽しみましょう。今月もよろしくお願いします。

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