書体デザイナーの小林章さんの著書です。
小林章さんの著書は、何冊か読んでいるのですが(まだ紹介出来ていませんが。。。)、どの本も勉強になるだけでなく、書体に対する愛情を感じられ、読んでいて非常に気持ちが良いのです。本書ももちろん充実した内容でした。
副題の「ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?」という言葉も、デザイナーだけでなく、経営者の方にとっても実に興味深いのではないでしょうか。
本書では、ロゴのみにフォーカスが当てられていて「どうして、こういう表現をしているのか?」等々、小林さんの経験や深い洞察を通して学ぶ事が出来ます。
この言葉は、本書にも登場するアドリアン・フルティガーさん(書体デザイナー)の言葉です。
とてもハッと気付かされる深い言葉ですね。
ロゴを作る時にも、デザインをする時にも、ついつい個性にこだわり過ぎて、本質を見落としていた。
なんて言うことは良くある事です。
デザイナーが“作品性を高めよう”と、エゴに走ってしまうこともありがちですので、デザインに大事な“バランス感覚”を見失ってしまわないようにしなければなりません。
有名なブランドの中には、既存のフォントを使用されたものも少なくありません。そして、そのロゴが100年に渡るブランドの繁栄を支えていたりするのです。
その事からも、オリジナルかどうか?という事が目的になってしまわないように、目的に応じて既存の書体が選択肢に入っていても良いという事が良くわかると思います。
Futuraという有名なフォントがありますが、日本で「ナチスの書体だから、使うのはタブー」なんていう噂があったようですが、それもアッサリと否定されています。
僕も実際にデザインをしていて、変な思い込みをされている方をよく見かけ「勿体無いなぁ」と感じることが多いです。
極端な例ですが「明朝体はダサい」とか(結構あるんです)。
ダサい書体というのは、使い方がダサかったり用途に合っていない為なのですが「書体が悪い」と思い込んでしまったり、単純に好みの場合もあります。
好みの場合は、好みに応じた対応をする必要があると思いますが、クライアント様の勘違いや思い込みに対しては、プロとし正しく導いていく対応をする必要があったりします。
それには、こういった書籍を読んで得た知識が役に立つこともありますので、読んでおくと良いと思います。
何よりも、我々デザイナーが変な思い込みをしないようにする事が一番大事なんだと改めて思わせてくれました。
読了後は、デザイナーとして背筋が伸びる思いでした。また、改めで書体に対する思いと愛情が深まった気がしています。
バカみたいな結論で恐縮ですが、デザインにもタイポグラフィーにも必要なのは“愛”です。
そう思わせてくれる良書です。
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