有機的DINの正体

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2021.07.01

2021年7月

梅雨真っ只中ですが、割と爽やかな空気で過ごしやすい日々が続いているように思います。夜に月を見ると、くっきりとした輪郭だったり、なんだか空気が澄んでいる日が多い印象です。とはいえ、全く空梅雨と言う訳ではなく、ちゃんと雨降りも多いという不思議な梅雨で悪くないです。というか好みです。この後にはうだるような夏がやってきますが、それはそれで楽しみです。

そして、いよいよ今月の後半からはオリンピックが開催されます。遂に来ました。コロナ禍でのオリンピックがどうなるのかは誰にもわかりませんが、ともかく、出場されるアスリートの方々にとって良いオリンピックになって欲しいものです。僕は純粋に競技を楽しみたいと思っています。世界中のトップアスリート達が日本に集結している。という事を考えると単純にすごい話ですしワクワクします。がんばれ福原愛ちゃん!関係ないけど。。

今月の見出し画像はきのこランプ作家「高野 幸雄」さんの作品です

今月に紹介する作品は、我が事務所の作業机にある謎のきのこ。タイトルでネタバレしているのでアレなんですけど、実はこれはキノコの傘部分が光るランプです。

とても良くできていて、知らない人が見たら本物のキノコかと思うかもしれません。
これを作る作家さんは、いつもピシッと見事なモヒカンで決めている「高野 幸雄」さんという方です。
高野さんのファンは全国(世界各国にも)にいらっしゃって、個展を開催すれば飛ぶように売れていってしまうほどの人気です。

写真では光っていませんが、夜に部屋の片隅で仄かに光るきのこランプは、どこかの森の奥の密やかな場所を思い起こさせます。というと意味不明だとは思いますが、実際のランプを見ればその良さがわかると思います。
残念ながらいつでも買える。という訳ではありませんので、気になる方は高野さんの動向を要チェックです。

今月のFONT紹介は“DIN NEXT LT Pro”

フォント紹介と言うと偉そうなんですが、自分の勉強の為に毎月書かせて頂いています。意見も個人的な意見となりますが、良かったら読んでみて下さい。

フォントの紹介を毎月行うようになってから4年半経ちますが、まだ紹介していないのが不思議なくらいの人気書体“DIN NEXT”を紹介させて頂きます。検索してみると、色々なサイトで紹介されているようですので、概要は他のサイトに任せることにして、実際の雰囲気を見ていただこうと思います。(サボり気味)
ファミリーはコンデンス体(長体)・イタリック体と合わせて21種類となっていますが、今回はイタリック体は紹介しません(サボり気味)。

まずはコンデンス体(長体)

DIN Next LT Pro Ultra Light condensed

DIN Next LT Pro Light condensed

DIN Next LT Pro condensed

DIN Next LT Pro Medium condensed

DIN Next LT Pro Bold condensed

DIN Next LT Pro Heavy condensed

DIN Next LT Pro Black condensed

ズラーッとコンデンス体(長体)を並べてみました。DINは元々ドイツの工業製品等に使用する書体の標準化を目指して作られた書体です。様々な用途に使用可能な機能性を持たせる為に、読み易く幅が狭い長体気味の書体を目指して作られているものですが、こちらはよりコンデンス体(長体)の条件の中で極限まで可読性を保つべく調整がされていて見事です。

次はノーマルです。

DIN Next LT Pro Ultra Light

DIN Next LT Pro Light

DIN Next LT Pro Regular

DIN Next LT Pro Medium

DIN Next LT Pro Bold

DIN Next LT Pro Heavy

DIN Next LT Pro Black

こちらがいわゆる“DIN”なんですが、調べるために並べて見た時に「あれ、思っていた印象と違うな」と思いました。“DIN”といえば、もっと無機質で無愛想だった印象を持っていましたが、思ったよりも有機的なカーヴが使われているような感じがしました。あれれ?

大文字だけで組んでみるとどうかな?

DIN Next LT Pro Medium大文字

DIN Next LT Pro Medium Condensed大文字

だいぶ“DIN”に抱いていた印象に近くなりました。でも、まだ思っていた無愛想感がない。ということで、他のメーカーのDINを引っ張り出してみました。

URW DIN Boldです。

URW DIN Bold

あ、まさにこれです。細長くて無愛想なフォント。これが僕の思う“DIN”です。なるほどー。メーカーが違うと、ここまで変わるんですね。かなり視覚的な調整が変わっています。
試しに下の文字を見てください。

DIN Oと0の比較

左側が無骨な“DIN”、URW DIN BoldのOと0で、右側が今回紹介の“DIN NEXT LT Pro”のOと0です。ちなみに0は斜め線あり、なしが選択可能です。

このような幾何学的な書体で、どのような調整を行っているのかをみる際には、一番単純な形を見るのがわかりやすいので、Oと0をピックアップしました。
「視覚調整とは何か?」を説明すると、要は目の錯覚をなくすための調整がポイントになります。左側(URW DIN)は直線が使われている部分、左右の線の真ん中あたりが内側に湾曲して見えます(実際には真っ直ぐです)。それを視覚調整して作られているのが、右側“DIN NEXT LT Pro”です。緩やかな曲線が使われている為、スムーズに見えます。

その細かい調整が、僕の思っていた“DIN”との差を生み出した正体だと思いました。書体も日々進化されていて、同じ書体名でもメーカーによって異なる調整がされている事は承知していましたが、それでも今回の“DIN”の違いには、あらためて書体の奥深さを感じました。古くからある書体を調整する場合、どこを重視して調整するか?という解釈の違いは当然出て来ますし、やはり再構築する以上、印象が変わるのは当然です。何も変わらないのであれば再調整する意味がないですしね。
今回の事を例えると、僕が勝手に「DINとは無機質さである」解釈し、制作側が「DINとは、読みやすさである」と解釈し(本当にそうかは分かりませんが)、その相違が印象の違いを生み出した。という感じなのかと思いました。

しかし、こうなって来ると同じ書体名が冠された色々なフォントを比較してみたくなって来ますね。フォントは果てしないです(涙目)。フォント紹介を続けていて「ネタがない」と何度も弱音を吐いていますが、それこそがフォントの奥深さをわかっていない証拠ですね。反省。ネタは尽きない。「ネタがない」はただの弱音である。という結論で今回は閉めさせていただきます。

さてさて、夏本番!そしてオリンピック!!とても良い季節に入っていきますが、当然コロナウィルスの状況には注意をしつつ過ごす必要がありそうです。
ともかく、オリンピックは行う!と決まっているので、僕のすべきは楽しむ。そしてその中でもコロナウィルスに感染しないように注意する。と言うことに尽きると思っています。良いオリンピックになりますように!そして福原愛ちゃんがんばれ!(しつこい)

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