ふと、出勤時に春を感じた朝がありました。ここのところ暖かかったので、十分に春を感じる陽気ではありましたが、それでも確実に「春だ」と思わせてくれたのは、鳥たちの鳴き声でした。基本的に引きこもり傾向の強い自分は、できる限り人通りの少ない、細い路地を息をひそめながら移動します。普段はあまり人が通らないような裏路地ですから、鳥たちの気配が強く、その日も鳥たちの気配を感じながら歩いてました。すると、いつもと鳴き声が違うことに気が付きました。
春告鳥とも呼ばれるウグイスが、先日までの「キョッ!キョッ!」という鳴き声から「ホー・ホケキョッ!」と鳴き方を変え、その瞬間に自分の頭の中でも「あ、春だ」というスイッチに切り替わったのでした。しかし、春になるとそのように鳴き声が切り替わる。ということは最初から知っていた訳ではなく、青梅という自然の色濃く残る街に住んでいて、いつの間にか身についた感覚だったように思います。あらためて、山の色、鳥の声、風の匂いで季節を知ることが出来る、素敵な街だなぁ。と思いました。
そんなルンルン気分で、事務所前を掃き掃除をしていても、地面を歩くアリも以前と比べると明らかに増えています。足元にも春が訪れているようです。ぼーっと掃いていると、アリたちを箒で掃き飛ばしてしまいます。たまにやってしまって「あ、ごめん」とか言うものの、アリ達からすると「めんご」どころではなく、必死で一族のために食料を集めに出かけたら、巨大な生き物が持つ木の枝が前方から迫り、気づいたら200メートル吹き飛ばされた。。というような“伝説”になるくらいに、恐ろしいことが起こっているのです。
良かれと思って掃き掃除をしていても、何かにとっては迷惑だったり、死活問題だったりもすことがあるということです。
そういうことを考え出すと、思考の渦が止まらなくなるのですが(病気?)、自分の部屋で飼っているメダカの水槽には、タニシのような貝(逆巻貝)が入っておりまして、それがとにかく繁殖力が強く、半透明のつぶつぶ入りの卵を壁面が埋め尽くされるぐらいに産むのです。
水槽内の生体のバランスが狂うと水も汚れるし「貝を飼っている水槽にメダカがいる」という逆転状態が生まれてしまいます。なので、卵や貝を取り除いたりするのです。自分はその水槽の管理者で、きれいに保つ責任があるからです。とはいえ、バランスを取るために取り除かれた貝や卵がどうなるか?というと、当然死んでしまうのです。
それを「仕方がないこと」「当然のこと」と言うのは、完全に人間の理屈です。「管理する者とされるもの」というのを、我々の社会に当てはめて考えみれば、それはわかります。とっても恐ろしい。ただ、これ以上考えてしまうと、大変なことになってしまいそうですので、一旦、次のコーナーへ行きましょう。次のコーナーは「フォント紹介のコーナー」です。はぁ。
フォント紹介と言うと偉そうなんですが、自分の勉強の為に毎月書いています。意見も個人的な意見となりますが、良かったら読んでみて下さい。
“Rotifera”というのは、あまり聞き慣れない英単語ですね。フォントの性格を知ることのヒントにもなるので、フォント名を調べてみたところ、日本語にすると「輪形動物門」らしく、ワムシと言われる、いわゆるプランクトンのことのようです。ほほう。どんな字形なのか気になりますね。見てみましょう。
なるほど。丸みがあるモダンローマン体ですが、有機的な線が生き物っぽいとも言えなくないですね。「k」の右上に突き出る線がキュートです。装飾的な特徴はそれ以外に目立った場所はなく、むしろ他のモダンローマン体よりも控えめな装飾で、センスよくまとめられていると思いました。
xハイトは高めで、フォルムがコロッとしつつも、モダンローマンらしいコントラストと、線のシャープな部分があるので、甘すぎないスイーツのような、絶妙にエレガントさを残すフォントです。ウェイトはRegularからBlackまでの6ウェイト用意されています。
次はイタリック体を見てみます。
イタリックは有機的な線がふんだんに使用されていて、生き物の躍動感をより感じられます(名前に引っ張られすぎかしら)。曲線はとてもエレガントで、作者の強いこだわりを感じさせられ、じっくりと見るべきポイントがあるように感じます。
このフォントの使い方としては、ラインの綺麗さを活かした見出し用書体として活躍しそうです。他のモダンローマンと比較すると、若干若年層向けのデザインに適しているのではないかと思いました。ロゴのベースとしても使いやすそうです。一方、長文に使用するには、やや不向きかと思います。参考までに、本文っぽい文章(Bob dylanの歌詞)で比較してみます。
上が“Rotifera”で、下が“Adobe Caslon Pro”ですが、xハイトの違いで(違いはそれだけではないですが)、読みやすさに違いが出る。ということが分かりやすいかと思い並べてみました。“Rotifera”は、文字全体の高さの均一感があり、見た目には綺麗に見えるのですが、文字として長文を読むには、1文字1文字が引っかかってくるようで、読みにくいのです。一方、“Adobe Caslon Pro”は文字の上(アセンダー)は出っ張り、文字の下(ディセンダー)も下にはみ出していて、凸凹して見えるのですが、それが読む際には役に立ち、一文字一文字を追わなくても、単語ごとの形で読み進めることができるのです。
これは日本語書体も同様で、ゴシック体がもてはやされた結果、たまに書籍の本文にもゴシックのUD(ユニバーサルデザイン)書体が使用されていたりしますが、一回買って読んでみたところ、見た目はすっきりしていて綺麗に見えるのですが、どうしても長い時間読むことができず、すぐに目が疲れてしまうのです。デザイナーはそのことを覚え、クライアントさんに適切に説明できるようにしたいですね。
はっ!本題とは関係ないところで、やや熱くなってしまいました。。しかも“Rotifera”を否定しているように見えなくもない(苦笑)。しかし、そんなことはなく、単純にフォントごとの機能がある。という話として捉えていただけると嬉しいです。“Rotifera”は素敵なフォントです。
ほら。見出しで使ってみてください。カッコいいですから。
さて、今月はこの辺で。
今月は前半もフォント紹介も、変なテンションになり大変失礼いたしました(汗)。最初は結構いい話だったような気がするんですが、なんなんでしょうね(他人事)。春だからかしら(責任転嫁)。
でも、前半の続きですが、自分が「管理者」になるか「メダカ」になるか「坂巻貝」になるか。という話は、この社会にも当てはめて言えることだな。と日々思います。それが水槽レベルの話なのか、社会レベルの話なのか、はたまた宇宙レベルの話なのか。というスケールの違いは当然あると思いますし「一緒にするな」と言われるのかもしれませんが、実際には地続きの話だと思います。まず、僕自身はタニシを殺すことのないようにする術を探りたいと思います。
「さぁ、春本番です」と文章の締めに言いたかったのですが、今日(3/31)は寒く、この記事が公開される4/1には雪予報が出ています。雪だるまと桜を同時に見られる貴重な春になるかもしれませんね。
今月もよろしくお願いしますー。
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