制作後記
自分が拠点とする、東京都青梅市発のソファーの新ブランド「VERITA SOFA」の立ち上げに関わるお仕事をさせていただきました。
始まりは2年程前。「案件の相談をしたい」と言って、弊事務所で打ち合わせを行いましたが、その時には契約には至りませんでした。しかしその後、共通の知人からたまたまVERITA SOFAさんの動きを聞く機会が多くあり「頑張ってるんだなー」と思っていると、連絡があり「やっぱりお願いしたい」と、2年越しの契約となりました。しかも、ブランドの立ち上げに関わる全ての制作物と、東京ビッグサイトで行う、展示会のプロデュースまで行う。というボリューム大きめな案件でした。
初めはブランドの方向性を決めるべく、ミーティングを重ねて行きました。どんなソファーを作るのか?どんな特徴を持たせるのか?どんな切り口で見せるのか?ということをひたすらと。
段々と見え始めた、オーナーの鈴木さんの実直な人柄や、作るソファーのシンプルな力強さを、まずはロゴタイプに反映させました。ちなみにブランド名の「VERITA」はオーナー様の名前(鈴木誠さん)である“誠”のイタリア語訳であり、とても強い言葉でもあることから、それを受け止めるために、強いロゴタイプを選択しました。ロゴマークは、オーナー様がこだわり抜いたソファーの足の形と、“VERITA”の頭文字“V”を冠した王冠に決定。
方向性が徐々に見え出し、次はブランドの方向性を決定づける、イメージ撮影を行いました。
場所は複数箇所を下見した上で、同じく東京都青梅市にある美術館のようなアンティークショップ、
MANSIKKA antiquesさんにお願いして、コーディネートと会場提供をお願いしました。メインイメージの写真撮影は
山城 功也さんで、僕の無茶な要求に対して嫌な顔もせずに、期待以上の写真で応えていただき、とても素晴らしいイメージ写真が出来上がりました。
この段階で、案件スタートから約半年、展示会まで残り3ヶ月と迫っていました。
ここから、来る展示会に向け、名刺、カタログ、会場に掲示するポスター、ウェブサイト制作を進めて行く必要がありました。
時間に余裕はありませんが、ブランドのイメージを固めるのに時間をかけて行ってきましたので、いままで溜めていた分を放出するかのように、迷いなく進めて行きました。
カタログは、このブランドの特色をより引き出し、シンプルさを引き出す世界観を作り出すために、カタログの紙選びから妥協せずに制作を行いました。
ソファーのパーツごとにカバーを交換できる。という商品の大きな特徴から着想を得て、ロゴが浮き出る上品な封筒の中に紙質やサイズの異なる組み合わせによるものにし、ソファーと同様に中身をいつでも変更可能なものとしました。トレーシングペーパーの挨拶文、アートペーパーで一枚づつ飾れるカード状のカタログに、細長いポスター等、触ってワクワクするようなものになりました。
会場に掲示する為のポスターは、カタログでも言及した「STYLE CHANGE SYSTEM」というこのブランド独自の、ソファのパーツごとにカバーを交換できる機能の説明を行う為のもので、ソファー画像の天地左右をバラバラに表現し、「それでも簡単に交換方法がわかってしまう」というややひねくれた手法で表現しました。
そのポスターやウェブサイトの為の素材の撮影は、
山口まり子さんにお願いしました。プロフィール写真・ソファーの着せ替え画像・パーツごとの撮影等、正確性や、説明をわかりやすくする必要のある難しい撮影でしたが、素晴らしい写真を撮っていただきました。また、このページに掲載している、展示会の会場写真や、制作物の撮影も山口さんによるものです。
ウェブサイトは、これらの世界観に対して説明を加えるものとして制作し、極力作ったイメージに手を加えず、シンプルな味わい深い世界観を大事に作ることを心掛けました。細かい演出としては、イメージ画像に対して、電灯がチラつくような動きを加え、紙では表現しきれない“時間”という奥行きを加えています。また、メニューの背景や、スマートフォンでメニューを開いた際の半透明の表現は、カタログのトレーシングペーパーでの表現と共通する世界観をイメージしています。
名刺は、グレーの紙にロゴをシルバーの箔押し、それ以外の部分は活版印刷で、とても品のある高級感のあるものとなりました。
ふぅ。一気に説明しましたが、ここまでで展示会の準備は終了し、あとはブランドのお披露目会となる、東京ビッグサイトで開催される「インテリア ライフスタイル2023」での展示会を残すのみとなりました。
展示会のブースは、VERITA SOFAさまの工房に実寸のスペースを作り、窓の位置や設置物の配置を調整しながら、施工業者とやり取りを行う→調整を繰り返し、前日の搬入を迎えました。また、会場の小物等のコーディネートは、カタログの撮影と同じく
MANSIKKA antiquesさんに依頼。撮影から参加していただいているので、世界観を共有できている安心感があり、スムーズに設営が進み、唯一無二と言っても良い素晴らしいブースが出来上がりました。
展示会は三日間ありましたが、自分も少しブースに立たせて頂き、皆様の反応を目で見て確かめられたことは、大変貴重な体験となりました。
さて、こうしてとてもとても濃い9ヶ月間が終わり、VERITA SOFAさまのソファーが無事にお披露目を終えることができました。
当然、ここから先の実際の売上等の数字が大事であることは勿論なのですが、まずは、展示会でのお披露目は、素晴らしいものになったと思います。
ここまで来れたのも、
山城 功也さん、
MANSIKKA antiquesの濱田さん、
山口まり子さんの多大なるご尽力のおかげです。この場を借りて感謝いたします。また、会場に設置するポスターの額装を、時間のない中素晴らしいクオリティで仕上げてくださった
BUTLERの森井さんにも感謝申し上げます。
何よりも、僕を信じて任せて下さり、様々な難しいご判断を、持ち前の男気でこなして下さったVERITA SOFAの鈴木さまのお力が、関わる人をまとめ上げ、素晴らしい結果を産み出したと思いましたし、それを近くで見させていただいた事は、感動的な体験でした。
さて、9ヶ月の内容の濃さを示すように、長文になってしまいました。ここまで読んでくださったあなたにも感謝いたします。
自分の中でも非常に大きい経験となった案件でした。VERITA SOFAさまの輝かしい未来のためのスタートに、自分の力がお役に立てたなら、こんなに嬉しい事はありません。