寒さオールド

2024.12.01

EMDesigns 2024年12月のニュース

2024年もついに最後の月となります。ということは、これが今年最後のコラムとなります。というわけで業務連絡ですが、今年は12/27(金)までのお仕事とさせて頂きます。
残り一ヶ月。気を引き締めて参りたいと思います。よろしくお願いします。

しかし、12月とはいえ全く寒くなく、昼間はコートがいらないくらいの陽気が続きます。近所の桜の木も戸惑っているようで、何輪か咲いてしまっていますが、今年の冬はこのまま大して寒くなく、また急に暖かい春になったりするんでしょうか。寒いのはそこまで得意ではないので有難いのですが、あのキリッとした冬の寒さも少し恋しいような、そうでもないような。

僕は、寒さのことを思い出そうとすると、小学生の頃の、祖父の家のあった亀戸あたりの、お正月の風景が頭に浮かびます。お正月はどこのお店も空いておらず、歩いている人もいない。そんな寒々しい街(でもそれが好きでした)を歩いている時の、寒かった記憶。その話からもわかるように、大昔の記憶です。今ではお正月でもお店は稼働していて、車の量も普段とさほど変わりません。なのに、自分の思い出の寒さは、強烈にその時の街の風景と結びついているのです。その時のことはよく覚えているのですが、特に幸せだったわけでも不幸だったわけでもなく、なんの変哲もない帰り道の記憶が、いつも思い出されるのです。皆様もそういう記憶があるかと思いますが、不思議ですよね。その記憶の奥に何があるのだろう?と、思索に耽っていても、絶対にどこにも辿り着かないのですが、せっかくですからお正月にでもやってみようかと思います。

今月のFONT紹介は“石井明朝オールド”です

フォント紹介と言うと偉そうなんですが、自分の勉強の為に毎月書いています。意見も個人的な意見となりますが、良かったら読んでみて下さい。

先月ご紹介した“石井ゴシック”があまりにも良かったので、その親戚筋(?)に当たる石井オールド明朝を、ご紹介します。こちらもモリサワが発表したばかりの新書体となります。といっても、こちらも写植時代の書体のリメイク版で、かなりしっかり作り込まれていると思われます。

石井明朝オールド

石井ゴシックは5ウェイト構成(L,M,R,B,EB)でしたが、こちらは4ウェイト(L,M,R,B)となっています。太さを見比べていくと、L〜Rまでの3つは段階的に太くなっている感じがしますが、Bになると急に太くなる感じがして、一瞬「雑?」と思ってしまいますが、先月に”石井ゴシック”の作り込みの細かさを見た後ですので、石井明朝オールドだけ雑になるはずが無い。と、理由を推測してみると「見出し用はBだけで十分」という理由が浮かび上がります。使う立場で考えてみても、明朝体は太い方のバリエーションはそこまで多く必要ないかもしれないなぁ。と思いましたが、どうですかね。Rとの間にもう一つのウェイトを作られるのであれば、一番太いウェイトをEBにしているはずだし、恐らくこれで完成なのだと推測されます。

書体としての方向性は、名前が示す通りクラシックで筆づかいを感じさせ、特にひらがなの筆致に特徴が表れています。力をグッと溜めるかのような姿勢の傾きや、伸びやかなカーヴの表情が、なんともたまらぬいい感じです。また、細い方のウェイトでも細い線と太い線のコントラストが強く出ていて、筆文字っぽさが強いことが特徴となっています。

石井明朝オールド ひらがな

次は欧文を見ていきましょう。

石井明朝オールド 欧文

石井明朝オールド 混植

欧文は綺麗なローマン体となっていて、恐らくGaramondを調整したものじゃないかと思いますが、日本語書体とのまとまりがとても良く、非常に使いやすく有難いです。

明朝体は、日本の情緒を感じさせるにはぴったりですし、上手に使うとデザインに洗練された印象を与えてくれます。また、文字の流れがあるため、長文を読みやすいのですが、この石井オールド明朝体はそれだけでなく、欧文とのまとまりが非常に良く、色々な言語が混じり合う日本の文章には、非常に有難い存在の書体だと思います。縦書きももちろん美しくまとまります。また素敵なフォントを知ることが出来て嬉しいですね。使ってみたい案件がいくつか思い浮かびます。

さて、今月(今年)はこの辺で。
この文章が公開された日には、僕は21gのイベントでバタバタしている頃だと思われます。もしこれを見て、まだ間に合う方は是非、繭蔵へ足をお運びいただけると、僕が喜びます。

もうすぐ大好きなお正月がやってきますね。お餅を喉に詰まらせないように、お正月を楽しましょう。
例年ですと、年明けのコラムも律儀に1日にアップしておりましたが、次回は6日のスタートとさせて頂きます。ご了承ください。
それでは、今年も後一ヶ月ですが、楽しみつつ頑張りましょう!
直接お会いできない皆様とは、これが今年最後のご挨拶となります。今年一年間、ありがとうございました!また来年もよろしくお願いいたします。そして良いお年をー!!!!

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