制作後記
我々日本人は、世界で唯一の被爆国ですが、残念なことにその記憶は薄れつつあります。もちろん記憶は薄れていくものですので、それを防ぐためにもアクションが必要となります。
まさにそのアクションとして、長崎県で保全・保護されている被曝樹木を通じ戦争の記憶を残すプロジェクトが発足され、そのWebサイトを制作させていただける事となりました。
被爆樹木は、物言わず淡々とその場に存在し続けています。そして我々はそこから様々な事を学び、次に繋がることに活かしていく事ができます。このサイトは、大声で反戦を訴えるのではなく淡々と事実を紹介し、見る人それぞれに感じて頂けるサイトを残していくことを目的として制作いたしました。
サイトには様々な被爆樹木の情報がありますが、サイトを通じて学芸員の方の淡々とした文章での解説があり、心にグッと残るものがあります。
また、爆心地と被爆樹木の位置関係が分かる地図を配置し、距離と被害の大きさや、地形の与える影響等、考えながら見ることが出来るようになっています。
このプロジェクトは、福山雅治氏が2014年に被爆クスノキをモチーフにした楽曲「クスノキ」を発表したことをきっかけに、所属事務所であるアミューズが被曝クスノキの保存の為に寄付を開始し、2018年に長崎市が、被爆樹木の保存・活用を推進していくため、プロジェクトを立ち上げたという経緯があり、アーティストの作品の持つ力の凄さを感じると共に、このようなプロジェクトに関われる喜び、責任の大きさを感じました。
制作しながら「自分は日本に住んでいながら、何も知らずにここまで呑気に暮らして来たんだな」と、自分の呑気さに気付いたと共に、今の日本が平和であることに、感謝の念も生まれました。
このプロジェクトのデザインを行うにあたって「現地を見ないで作る訳にはいかない」と思ったのですが、制作期間中にコロナ禍による緊急事態宣言が発令され、行くことが叶いませんでした。
しかし、いつか必ず足を運び、直接被爆樹木や、戦争の爪痕をこの目に焼き付け、少しでも次の世代に伝えていきたいと思いました。
日本人として、このようなプロジェクトに関われた事は、大変光栄な事ですし、今後も精進して意味のある仕事をしていかねば。と強く思わせてくれた案件でした。ありがとうございました!